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遺言作成に最も重要なのは…

2009.06.01

「遺言書を作成する場合、自筆証書と公正証書ではどちらがお勧めか?」とよく尋ねられます。その場合、私は「断然、公正証書遺言がお勧めです。」とお答えしています。自筆証書遺言と比べて、法律的な完璧性、相続発生時までの保管の確実性、相続発生後の各種手続きの簡便性、どれをとっても公正証書遺言の方が勝っているからです。

それに対して、こういうご心配をされている方も結構いらっしゃいます。「手が震えて字が書けないのですが・・・」「声を発することが出来ないのですが・・・」

字が書けないとなるとサインが出来ないので、自筆証書遺言の作成は無理ですが、公正証書遺言であれば問題ありません。公正証書遺言でも基本的には遺言者の自署が必要です。しかし、事情により遺言者がサイン出来ない場合は、公証人が補助するなどして対応してくれます。従って、まったく問題なく遺言書を作成することができます。

 

では、口述できない場合でも公正証書遺言は作成可能でしょうか?遺言の内容を予めご本人に確認の上で公証人へ提出すれば、それに沿って公証人が遺言書を作成してくれます。後日、公証人がそれをご本人の前で読み上げ間違いがないかどうかを遺言者本人に尋ねますので、それに「Yes」の意思表示さえ出来れば問題ありません。あとは、証人2名および公証人が署名・捺印して完成となります。

遺言者が入院しているなどの理由で公証役場へ行くことが出来ない場合も、出張料という別途の料金はかかりますが、公証人が病院まで出向いてきてくれますので、そこで公正証書遺言の作成が可能です。

字が書けること、話が出来ること、公証役場まで出向けること、いずれも公正証書遺言作成の必須条件ではありません。では、作成上最も重要なものは何か?それは、遺言者の判断能力です。

今年の1月に、福島地裁いわき支部で認知症女性の公正証書遺言を巡る裁判が行われました。いわき市内の高齢者入所施設に入っていた女性が亡くなり、その公正証書遺言の有効性が争われたのです。遺言では、女性の全財産が高齢者入所施設に遺贈される内容となっていました。これに異を唱えたのが女性の妹さんです。実は、この遺言書、女性が亡くなる4ヶ月前に新たに作り変えられていたものでした。判決によると、亡くなる4ヶ月前に遺言書が作り変えられたとき、女性は軽度の認知症であったと認めています。しかしながら、医師の診断書や遺言書作成にあたった公証人の証言から、「遺言能力が無かったとはいえず、有効な遺言書と言える」というのが最終的な地裁の判断でした。

判決では「女性は軽度の認知症で、遺産を施設に遺したいと自ら伝えられるだけの精神状態だった」と認定。遺言の証人を務めた運営会社の業務課長らについて「従業員に過ぎず、遺産の受遺者に該当するというのは困難。(遺言書を作成した)公証人も施設側との利害関係はなかった」と判断されました。 施設側の代理人は「本人の意思に基づき遺言書が作られたことが、判例に照らし正当に判断された」と話しており、原告側の代理人は「認知症の高齢者の財産管理にかかわる問題であり、控訴審の判決を期待したい」と語っています。【出典:毎日新聞】

『死人に口なし』と言われるように、本人の真意を確かめる方法はもうありません。判断能力の確かなうちに遺言を作成し、内容は明かさないまでも家族にその事を伝えておく。自分の真意に基づいて遺言を作成している事をきちんと伝えておくことが大事なのかもしれませんね。

なお、遺された遺言が自筆証書遺言であった場合は、『遺言を誰かに無理やり書かされたのではないか?』と言う疑惑がどうしても高まってしまいます。公正証書遺言の場合であれば、公証人や、相続に利害関係の無い2人の証人がその遺言について公平な目でチェックをして作成します。しかし、自筆証書遺言の場合は、もし誰かの思惑によって遺言を無理やり書かされる事になっても、第三者の目が入る機会がありません。もちろん、自筆証書遺言が必ずそうであるとは言いませんが、公正証書遺言の方が相続人としても安心で、納得のいきやすい遺言の形式ではないでしょうか。

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筆者紹介

江頭 寛
福岡相続サポートセンター
代表取締役社長

生前対策から相続発生後の申告・納税に至るまで、皆様から寄せられる無料相談への対応や、希望する幸せな相続の実現に向けての対策立案と実行支援を、弁護士・税理士・司法書士・不動産鑑定士等の先生方をコーディネートしながら日々やらせて頂いてます。お客様にとってベストな相続並びに資産の有効活用を徹底的にサポートすることが私の最大の使命です。また、相続対策セミナーも全国各地で積極的に開催中。まずはお気軽にご相談ください。

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